子どもの権利擁護に関する近年の動向の中で、最も新しいものを1つ選びなさい。

  1. 「社会的養護の課題と将来像」の発表
  2. 「こども基本法」の施行
  3. 「新しい社会的養育ビジョン」の発表
  4. 意見表明等支援事業の施行
  5. 「児童の権利に関する条約」(条約名)の児童福祉法への明記

1 × 「社会的養護の課題と将来像」の発表は、2011年です。

2 × 「こども基本法」は、2022年に成立し、2023年に施行されました。

3 × 「新しい社会的養育ビジョン」の発表は、2017年です。

4  意見表明等支援事業は、2022年の児童福祉法改正で創設され、2024年から施行されています。

5 × 「児童の権利に関する条約」(条約名)は、2016年の児童福祉法改正で、第1条に「児童の権利に関する条約の精神にのっとり」と、明記されました。

並べ替えると

2011年 「社会的養護の課題と将来像」の発表
2016年 「児童の権利に関する条約」(条約名)の児童福祉法への明記
2017年 「新しい社会的養育ビジョン」の発表
2023年 「こども基本法」の施行
2024年 意見表明等支援事業の施行

となり、「4 意見表明等支援事業の施行」が最も新しいものとなります。

 同じ2022年に成立した「こども基本法」と「意見表明等支援事業」ですが、施行日については1年異なっていることがポイントです。

 2022年の児童福祉法の改正内容のうち、多くは2024年4月1日施行となっていますが、一時保護開始時の司法審査の導入は、2025年4月1日施行。
 日本版DBS導入のための取り組みについては、一部は2022年9月15日より、一部は2023年4月1日より施行されています。

 最新の法改正情報は、出題されやすい内容ですので、法律・制度の新たな動きは、意識して覚えるようにしましょう。

 以下の記述のうち、「児童の権利に関する条約」(注)における一般原則に該当するものを1つ選びなさい。

(注)「児童の権利に関する条約」とは、1989年(平成元年)11月20日に第44回国連総会において採択され、我が国が1994年(平成6年)4月22日に批准した条約のことである。

  1. 教育についての権利
  2. 児童の養育及び発達についての父母の責任
  3. 監護を受けている間における虐待からの保護
  4. 武力紛争における児童の保護
  5. 差別の禁止

 「児童の権利に関する条約」の一般原則は、あらゆるこどもの権利の実現を考える際に、併せて考える必要のある4つの基本的な考え方(原則)を指しています。

 「4つの一般原則」とは、次の4つです。

差別の禁止(差別のないこと)」
子どもの最善の利益(子どもにとって最もよいこと)」
生命、生存及び発達に対する権利(命を守られ成長できること)」
子どもの意見の尊重(子どもが意味のある参加ができること)」

 以上をふまえると

 1 × 教育についての権利(第28条)は、一般原則に該当しません。
 2 × 児童の養育及び発達についての父母の責任(第18条)は、一般原則に該当しません。
 3 × 監護を受けている間における虐待からの保護(第19条)は、一般原則に該当しません。
 4 × 武力紛争における児童の保護(第38条)は、一般原則に該当しません。
 5  差別の禁止(第2条)は、4つの一般原則の1つです。

 ストレートな問題ですが、「生命、生存及び発達に対する権利」と「児童の養育及び発達についての父母の責任」の混同に注意しましょう。

 家族が社会の基礎的集団としてこどもの成長と福祉の責任を担うことは、条約前文にも記載されていますが、「児童の権利に関する条約」における権利の対象は「こども」であり、家庭は「こども」の成長発達のための環境として、必要な保護と援助を与えられるとされています。

 「こども」を権利の主体と考えると、どのような考え方が、すべての権利の基礎にあることがふさわしいのかが見えてきます。

 虐待等による子どもへの影響に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. レジリエンス研究の流れから、小児期の保護的・補償的体験尺度(PACEs)が作成されている。
  2. 愛着スタイルの観点から見て、被虐待児には安定型が多いとされる。
  3. 逆境的小児期体験(ACEs)は、虐待等の体験が「3年以上継続していること」を必須の要件としている。
  4. 脱抑制型対人交流障害(DSED)は、恐れや不安が喚起されても自ら大人に慰撫を求めることが少ないことを特徴とする。
  5. 保護者からの暴力を受けた子どもは、暴力で問題を解決することを強く忌避するようになる。

 1  逆境的体験を経ても問題が発生しなかった人々に関する研究から、良好な社会的関係性や環境などのレジリエンス要因が保護的・補償的体験としてリスト化されています。
 2 × エインズワースが提唱したストレンジシチュエーション法を用いたアタッチメントの分類によれば、不適切な養育を受けたこどもは一貫性のない行動を示し、「無秩序・無方向型」と呼ばれています。
 3 × 逆境的小児体験(ACEs)には、期間の要件は特に設けられておらず、家族の自殺企図や収監、性暴力などは、一回性の体験であってもACEとみなされます。
 4 × 脱抑制型対人交流障害は、見知らぬ他人にも過度になれなれしくふるまうといった特徴が見られます。恐れや不安が喚起されても大人に慰撫を求めないのは、反応性アタッチメント障害(RAD)の特徴です。
 5 × 保護者からの暴力を受けたこどもは、圧倒的な力を用いた解決法として、暴力を学習してしまうおそれがあります。

 逆境体験が、こどものアタッチメント形成や対人関係に及ぼす影響を問う問題です。
 それぞれの研究の概要と、アタッチメント障害のタイプについて概要を把握しておきましょう。

 また、ストレンジシチュエーション法による、アタッチメントの分類には「無秩序・無方向型」のほかに、「A型 回避型」「B型 安定型」「C型 アンビバレント型」があります。
 それぞれの養育者は相対的に、拒絶的、高い応答性、一貫しない接し方をしがちであるとされています。

 虐待等を受けた子どもへの支援に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 児童福祉施設において、虐待を受けた子どもへの日常生活上の支援は、心理療法を行う所定の資格を有する者に限定されている。
  2. 虐待を受けた子どもの保護の取り組みは、子どもにとっては大きな喪失体験となってしまう場合がある。
  3. トラウマインフォームドケアとは、特別な訓練を受けた医師や心理職による系統化された専門療法のことである。
  4. 喪失を体験した子どもへの関わりとして「余計なことを考える暇がないほど忙しくせよ」というメッセージを送ることは有効である。
  5. プレイセラピーでは、セラピー中に子どもがトラウマを受けた場面を再現することは禁忌事項とされている。

 1 × 児童福祉施設における日常生活上の支援は、児童指導員や保育士、児童生活支援員などが主たる担い手です。
 2  こどもが保護されることにより、両親のほか、大切な思い出の品、友人関係、地域の人々との関係が失われた場合は、大きな喪失体験となることがあります。
 3 × トラウマインフォームドケアは専門療法ではなく、すべての対人支援者に求められる、トラウマに関する知識を前提とした関わりのことです。
 4 × 「余計なことを考える暇がないほど忙しくせよ」は、ジェイムス&フリードマンによって「ありがちだが不適切な関わり方」の1つに挙げられています。
 5 × 遊びの中で再現される外傷体験を治療に活かしたアプローチとして、ポストトラウマティックプレイセラピーがあります。

 心理的なアプローチは、外来語が多く使用されるため、それぞれの言葉がどのような意味なのか(例:informed=知識のある)確認しておくと、理解が進みやすいと思います。

不適切な養育を受けたこどもに対するケアは、トラウマに対する基礎的な理解が不可欠です。
トラウマ反応と適切な対処について、念のため確認しておきましょう。

 子どもや家庭への支援における組織・団体の役割に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. こども家庭庁は、「女性支援新法」(注)を所管している。
  2. 市町村は、児童虐待相談のうち子ども虐待や親の精神疾患が重なるなど、深刻で複雑なケースを主に担当する。
  3. 都道府県の児童相談所は、管轄内にある要保護児童対策地域協議会の運営・管理を行う。
  4. 市町村社会福祉協議会には、生活困窮者自立相談支援事業の実施が義務付けられている。
  5. 女性相談支援センターには、一時保護を行う施設が設けられている。

(注)「女性支援新法」とは、「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」(2024年(令和6年)4月施行)のことである。

 1 × 勘違いしやすいところですが、「女性支援新法」を所管するのは、厚生労働省(社会・援護局)です。
 2 × 市町村は、住民に最も身近な相談窓口として、初期対応や子育て支援などの社会資源を活用することで、対応可能なケースを取り扱います。
 3 × 要保護児童対策地域協議会は、基本的には住民に身近な市町村が設置しますが、地域の実情に応じて広域連合などによる共同設置も可能です。
 4 × 生活困窮者自立相談支援事業は、都道府県、市、福祉事務所を設置する町村に、実施が義務付けられていますが、社会福祉協議会に委託して実施している自治体が最も多くなっています。
 5  女性相談支援センターの業務として「困難な問題を抱える女性及びその同伴する家族の緊急時における安全の確保及び一時保護を行うこと」が挙げられています。

  住民に身近な市町村と、広域的・専門性の高い都道府県の役割の違いがポイントです。

 また、こども家庭庁に移管した法律や、共管・一定の関与を行う法律について、どのようなものがあるかを把握しておきたいところです。

 「児童福祉法」「児童虐待防止法」「母子保健法」「子ども・子育て支援法」のほか、「母子父子寡婦福祉法」「子ども・若者育成支援推進法」「少子化社会対策基本法」などの主要な法律に規定される、主な事業の概要も要チェックです。